パワー・オブ・ワン

イギリス人の孤児PKが、家族の政治的信念を理由にアフリカで性的・精神的に追い詰められるところから物語は始まる。彼の唯一の友となるのは、かつての囚人ゲール・ピートという老練な男で、ピートはボクシングを通して「拳で戦い、心で導け」という信条を教える。暴力と差別に満ちた世界で育ったPKは、肉体の強さだけでなく、心の強さと道徳を磨いていく。

やがて成人したPKは、学んだ信条を武器にして不正に立ち向かい、アパルトヘイトや人種差別といった制度の不条理を糾そうとする。個人的な復讐ではなく、人々を導き励ますことで変化を生み出そうとする姿は、ひとりの人間がいかに影響力を持ち得るかを力強く示す。勇気、師弟関係、そして希望について考えさせられる感動的な物語である。