アリス・スウィート・アリス

内向的で寡黙な12歳のアリスは、母親の愛情を妹カレンに奪われたように感じながら、常に影に追いやられて生きている。カトリックの信仰と儀式が色濃く残るコミュニティを舞台に、家族の緊張と孤立が細やかに描かれ、幼い少女の複雑な内面が静かに積み上げられていく。

しかし、教会で発見されたカレンの凄惨な死によって平穏は裂かれ、疑いの目はアリスへと向けられる。観客は「12歳の少女が本当にそんな残虐な行為を？」という問いに突きつけられ、宗教的な象徴や家庭の不和、罪と贖いのテーマが入り混じる不安な空気の中で真相の輪郭が曖昧にされていく。緊張感ある演出と陰影深い映像が、不穏で忘れがたいホラー体験を作り上げている。