脱走特急

『Von Ryan's Express』（1965年）は、第二次世界大戦中のイタリアを舞台にしたスリリングな脱走劇です。フランク・シナトラが演じる米軍大佐ジョセフ・ライアンは、捕虜収容所からの脱走を主導し、貨物列車を奪って敵地を突破しようと試みます。その発想と大胆さが物語の出発点となり、荒廃した戦時下の風景と列車の疾走シーンが緊張感を高めます。

物語の核は単なる逃走以上に、人間関係と指揮の葛藤にあります。ライアンは一時的に英国軍の士官たちを率いる立場になり、国籍や軍隊の違いから生まれる摩擦や信頼の獲得が大きなテーマとなります。列車を舞台にした追跡や空襲、補給不足といった外的な危機が次々と襲いかかる中で、指導力や犠牲、仲間意識が試されていきます。

演出はテンポよく、列車の狭い空間を活かした緊迫感と広がる戦場の対比が魅力です。シナトラのカリスマ性と冷静な判断力、そして仲間たちとの確執や和解がドラマを深め、観客を最後まで引き込む力があります。クラシックな戦争アクションと人間ドラマが融合した一作で、戦時映画やスリラーを好む人におすすめできる作品です。