National Theatre Live: Good

ナショナル・シアター・ライブによる『グッド』（2023）は、第二次世界大戦を目前にしたドイツを舞台に、善良で知的な大学教授ジョン・ハルダーの転落を描く舞台映像作品です。ハルダーは自身を「良い人間」と信じながらも、次第に社会の潮流や政治的圧力に引き込まれていき、小さな妥協がやがて取り返しのつかない結果を生む過程が冷静かつ痛烈に描かれます。

作品は個人の道徳的選択と集団的責任を問い、観客に「無自覚な加担」がいかにして成立するのかを突きつけます。精緻な演出と主演の繊細な表現によって、理性と良心の崩壊が生々しく伝わり、観終わった後も長く心に残る重厚な劇体験を提供します。