1940年代、ナチスに占領されたアントワープを舞台に、若い二人の警察官が日常と非日常の境界で引き裂かれていく。権力に従うことで家族や自分の安全を守るか、あるいは抵抗に身を投じて正義を貫くか――身近な人々との関係や職務の重圧、目の前にある小さな善行と大きな裏切りが、彼らの判断を鋭く試す。街の暗がりや検問所、密告の恐怖が常に交差し、選択の一瞬一瞬が生々しい緊張を生む。
物語は単なる善悪の対立にとどまらず、個々の良心の揺らぎや罪悪感、赦しの可能性を繊細に描き出す。表情や沈黙が語ること、そして些細な行為が連鎖して大きな結末を招くさまは、観る者に戦時下の人間性と責任について深く問いかける。静かなカメラワークと俳優たちの抑制された演技が、逃れられない時代の重量をやわらかくも確実に浮き彫りにしている。