1970年代のグラムロックを象徴するカリスマ、マーク・ボランと彼のバンドT. Rexの音楽と詩世界を丁寧に掘り下げる作品。アーカイブ映像やコンサートの演奏、関係者や同時代のミュージシャンのインタビューを織り交ぜながら、「Bang a Gong (Get It On)」をはじめとする代表曲の誕生とその衝撃を鮮やかに再現する。煌びやかなステージの裏で揺れ動く創作の苦悩や、時代とともに変容した評価の軌跡も描き、単なる回顧録にとどまらない深みを持つ。
映像は断片的な記録を詩的に編み合わせ、神話化されたボラン像と人間としての弱さを同時に提示することで観る者の感情を揺さぶる。音楽史への影響力や後進への連鎖を明示しつつ、楽曲に宿る実験性や言葉の力を改めて浮かび上がらせる構成は、ファンにも初めて触れる人にも新しい発見をもたらすだろう。