2013年に起きた悪名高い「うんちクルーズ」事件を描く本作は、エンジン火災で船が停電し、上下水道も使えなくなったまま海上に取り残された4,000人の乗客たちの72時間を追う怒涛のドキュメンタリーです。乗客や乗員への追跡取材、当時のアーカイブ映像、専門家の証言を織り交ぜながら、混乱と恐怖、そして予想外の連帯が入り混じる現場の生々しさを映し出します。
政治的な対応の遅れや企業の責任、メディアの報道合戦といった構図を冷静に検証しつつ、個々の人間ドラマに寄り添うことで、単なるスキャンダル再現にとどまらない重層的な物語を紡ぎます。ユーモアと不快感が隣り合わせになる独特のトーンは、観客に安全基準や公共の責任について問いを投げかけると同時に、生き延びた人々の回復力を強く印象付けます。