重い病を抱えた父の治療費に窮した青年アケは、家に代々伝わる神聖な護符を名匠セング・パラダイスの鑑定に出すことを決意する。護符は単なる財産ではなく家族の歴史と信仰を宿す品であり、その行方はアケの良心と切実な必要の狭間に立つことになる。街の喧騒と寺院の静寂が交錯する中で、鑑定が進むほどに明らかになるのは物質的価値だけでなく、隠された過去や関係者たちの思惑だった。
映画は、伝統と現代の価値観、家族愛と利害のぶつかり合いを静かに、しかし緊張感を持って描く。アケの葛藤を映す繊細な演出と、セング・パラダイスをめぐる神秘的な空気が観客を引き込み、最終的に何を選ぶかが持つ重みを問いかける。映像美と音響が感情の細部を拾い上げることで、観た者に深い余韻を残す作品となっている。